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続世継
四宇治の川瀬
白河院の御世にきさきみやすどころなどかくれさせ給て、さるかた〴〵もおはせざりしに、白川殿ときこえ給ふ人おはしましき、その人待賢門院おばやしなひたてまつり給ひて、院も御むすめとてもてなしきこえさせ給しなり、その白川殿あさましき御宿世おはしける人なるべし、宣旨などはくだされざりけれども、世の人ぎおむの女御とぞ申めりし、もとよりかの院のうちのつぼねわたりにおはしけるお、はつかに御らんじつけさせ給て、三千の寵愛ひとりのみなりけり、たヾ人にはおはせざるべし、賀茂の女御と世にはいひて、うれしきいはひおとて、あねおとうとのちにつヾきてきこえしかど、それはかの社のつかさ重助がむすめどもにて、女房にまいりたりしかば御目ちかヽりしお、これははつかに御覧じつけられて、それがやうにはなくて、これはことの外におもきさまにきこえ給ひき、