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続古事談
一王道后宮
東宮の御まもりに、つぼきりと雲大刀は、昭宣公〈◯藤原基経〉の大刀也、延喜の御門儲君におはしましけるに奉られたりけるより伝はりて、代々の御まもりとなるなり、後三条院東宮に立給時、後冷泉院よりわたされざりけり、後冷泉院うせ給て後もとめいでヽ、大二条殿〈◯藤原教通〉関白の時、後三条院にたてまつられにけり、立坊の後二十余年わたされでやみにき、今位につきて後、とヾめられずともありなむと世の人申けり、後三条院おほせられける、神璽寳剣えうなりしかども、二十余年すぎにき、何かくるしからんとてとヾまりにけり、其後ほどなく二条内裏の火事にやけて、身ばかりのこりたりけるに、つかさやお作りてぐせられたる也、