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神皇正統記
嵯峨
一旦国おゆづり給ひしのみならず、行末迄もさづけましまさんの御心ざしにや、新帝〈◯淳和〉の御子恒世親王お太子に立給ひしお、親王又かたく解退して世おそむき給ひけるこそありがたけれ、上皇〈◯嵯峨〉ふかく謙譲しましけるに、親王又かくのがれ給ひける、末代までの美談にや、むかし仁徳兄弟相譲給ひし後には聞ざりし事なり、