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神皇正統記
仁徳
応神かくれましゝかば、御兄たち、太子〈◯菟道稚郎子〉おうしなはんとせられしお、此尊〈◯大鷦鷯〉さとりて、太子と心お一にしてかれお誅せられにき、援に太子天位お尊にゆづり給ひ、尊かたくいなみ給ふ、三年になるまでたがひにゆづりて位おむなしくす、太子は山城の宇治にます、尊は摂津の難波にましける、国々の御つぎ物もあなたかなたにうけとらずして、民の愁へとなれりしが、太子みづからうせ給ひぬ、尊おどろきなげき給ふ事かぎりなし、されどのがれますべき道ならねば癸酉の年即位、