[p.1393]
大鏡
一後一条
むかし一条の院の御なやみのおりおほせられけるは、すべからくは次第のまゝに、一のみこ〈◯敦康〉おなむ春宮とすべけれど、うしろみすべき人なきにより思ひかけず、さればこの宮おばたて奉るなりとおほせられけるぞ、此たうだい〈◯後一条〉の御事よ、げにさる事ぞかし、帝王の御次第は申さずともありぬべけれど、入道殿下〈◯藤原道長〉の御栄花もなにゝよりひらけ給ふぞと思へば、まづ御門后の御ありさまお申なり、うえ木はねお生じてつくろいおほしたてつればこそ、えだもしげりてこのみおもむすべや、しかあればまづ帝王の御つゞきおおぼへて、つぎに大臣の御つゞきはあかさんとなり、