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栄花物語
一月宴
かゝる程に、后のみやも御門〈◯村上〉も、四の宮〈◯為平親王〉おかぎりなきものに思ひ聞えさせ給ければ、そのけしきにしたがひて、よろづの殿上人上達部、なびきつかうまつりてもてはやし奉り給程に、やう〳〵十二三ばかりにおはしませば、おほんげんぶくのことおぼしいそがせ給、おほんむすめもたまへるかんたちへは、いみじうけしきばみ聞え給に、宮の大夫と聞ゆる源氏のさ大しやう、〈◯源高明〉えもいはずかしづき給ひとりむすめお、さやうにとほのめかし聞え給ければ、みかどもみやも、おほんけしきさやうにおぼしければ、よろこびてやがて其夜参り給、例の宮たちは、我さとにおはしそむる事こそ常の事なれ、これは女御更衣のやうに、やがて内におはしますに参らせ奉り給べきさだめあれば、例の女御更衣の参はさることなり、これはいとめづらかにさまかはりいまめかしうて、おほん元服の夜やがて参り給、帝きさきの御よめあつかひ(○○○○○○○)の程、いとおかしくなんみえさせ給けり、