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今昔物語
二十二
高藤内大臣語第七
此の高藤の君、止事無く御ける人にて、成上り給て大納言まで成給ひぬ、彼の姫君〈◯胤子〉おば宇多院の位に御しける時に、女御に奉り給ひつ、其の後幾く程お不経ずして、醍醐の天皇おば産奉り給へる也、〈◯中略〉祖父の大領〈◯宮道弥益〉は四位に叙して、修理の大夫になむ被成たりける、醍醐の天皇位に即せ給ひにければ、祖父の高藤の大納言は内大臣に成給ひにけり、其後弥益が家おば寺に成して、今の勧修寺此也、向の東の山辺に其妻堂お起たり、其名おば大宅寺と雲ふ、此れ弥益が家の当おば、哀れに睦しく思食けるにや有けむ、