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続世継
七うたゝね
六条殿〈◯源顕房〉は、よのおぼえあに〈◯源俊房〉よりもまさり給て、大納言の大将、中宮〈◯白河后賢子〉のおほんおやにておはせしに、大臣あきて侍りけるお、白川のみかどおぼしわづらはせ給て、ひごろすぎけるに、匡房の中納言におほせられあはせければ、ほりかはの大納言〈◯俊房〉おなさせ給へとうちいだして申ければ、みかどおほせられけるは、おとうとなれども、右大将中宮の御おやにて、このたびならずば法師にならんといふなり、又上らうども有て、われこそなるべけれなどいへば、それもすてがたきなりとおほせられければ、大納言大臣になり侍ることは、かならずしも一二といふこと侍らず、なるべき人おえりてなされ侍るなり、又国のつかさへたる人いかゞなど申侍りければ、すがはらのおとゞ〈◯道真〉もさぬきのかみぞかしとおほせられければ、江帥申けるは、はかせはべちのことに侍り、又さいがくたかく侍らんあにお、大臣になさせ給はんに、出家するおとうともよに侍らじと申ければ、堀川殿はなり給へりけるとぞ、六条のおとゞはそのゝちにぞなり給し、中宮の御おやほりかはのみかどの御おほぢにていとめでたくおはしき、