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神皇正統記
清和
天皇諱は惟仁、水尾の帝とも申す、文徳第四の子、御母は皇太后藤原の明子、〈染殿の后と申す〉摂政太政大臣良房の女也、我朝は幼主位に居たまふ事希なりき、この天皇九歳にて即位、戊寅の年なり、己卯に改元、践祚ありしかば、外祖良房の大臣はじめて摂政せらる、〈◯中略〉天皇おとなび給ければ摂政政お還し奉りて、太政大臣にて白河に閑居せられにけり、君は外孫にましませば、なほも権お専らにせらるともあらそふ人あるまじくや、されど謙退のこゝろふかく、閑適おこのみて、常に朝参などもせられざりけり、