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栄花物語
一月の宴
安和二年八月十三日なり、御門〈◯冷泉〉おりさせ給ぬれば、東宮〈◯円融〉くらいにつかせ給ひぬ、御年十一なり、東宮におりいの御門の御このちごみやいさせたまひぬ、師貞親王〈◯花山〉なり、伊尹の大納言の御さいはひいみじくおはします、〈◯中略〉東宮〈◯花山〉の御年ふたつなり、〈◯中略〉かかるほどに五月廿日、一条のおとゞ〈◯伊尹〉摂政の宣旨かうぶり給て、一天下我御心におはします、東宮の御おほぢ、みかどの御おぢにて、いと〳〵有べきかぎりの御おぼえにてすぐさせ給、此御ありさまにつけても、九条殿の御有様のみぞなほいとめでたかりける、