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愚管抄

花山院には、義懐の中納言こそは外舅なれば、執政すべけれど、践祚の時は蔵人頭にこそ、初て四位侍従に任じて、やがてとく中納言になりて、三条関白〈◯藤原頼忠〉如元とておはしけれども、国の政はおさへて義懐おこなひけるほどに、わづかに中一年にて、不可思議の事出来にければ雲ばかりなし、大入道殿〈◯藤原兼家〉はこの継めにと、日比の違恨お思しけれども、外祖舅にもあらず、小野宮〈◯藤原実頼〉どのゝ子、九条殿〈◯藤原師輔〉の子、たゞ同じ事なれば、もと宿老になりて、関白ならんとおもふべきやうなしと、思召けるも道理にて、この時はやみにける、