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栄花物語
十五疑
殿の御まへ〈◯道長〉世しりはじめさせ給てのち、御門は三代にならせ給、わが御世は廿三四年ばかりにならせ給に、みかど〈◯後一条〉わかうおはしますときは摂政と申、おとなびさせ給ふおりは関白と申ておはしますに、このころ摂政おも御一男、たゞいまの内大臣〈◯頼通〉に譲きこえさせ給て、我御身は太政大臣の位にておはしますおも、つねにおほやけにかへし奉らせ給へど、おほやけさらにきこしめしいれぬに、たび〳〵わりなくてすぐさせ給、御心にはすさまじうおぼさるゝ事かぎりなし、