[p.1606]
続世継
一司召
後三条院、〈〇中略〉まだ御子におはしましゝとき、ちゝの御門後朱雀院、さきのとしの冬よりわづらはせ給て、むつきの十日〈〇寛徳二年〉あまりのころ位さらせ給て、みこの宮〈〇後冷泉〉にゆづり申させたまふことばかりにて、春宮のたゝせ給事はともかくもきこえざりけるお、能信大納言とて、宇治どの〈〇頼通〉などの御おとうとの、たかまつ〈〇源明子、高明女、〉のはらにおはせしが御前にまいりて、二宮〈〇後三条〉おいづれの僧にかつけたてまつり侍るべきときこえさせ給ひけるに、坊にこそはたてめ、僧にはいかゞつけん、関白〈〇頼通〉の春宮の事はしづかにといへば、のちにこそはとおほせられけるお、けふたゝせ給はずばかなふまじきことに侍りと申給ひければ、さらばけふとてなん春宮はたゝせ給ひける、やがて大夫にはその能信大納言なりたまへりき、君の御為たゆみなくすゝめ奉り給へりけん、いとありがたし、