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神皇正統記
白河
宇治の大臣〈〇藤原頼通〉の世となりて、三代の君〈〇後一条、後朱雀、後冷泉、〉の執政にて、五十余年権お専らにせらる、先代には関白の後は如在の礼にてありしに、あまりなるほどになりにければにや、後三条院の坊の御時より、あしざまにおぼしめすよしきこえて、御中らひあしくて、あやぶみおぼしめすほどの事になむありける、践祚の時、関白おやめて宇治にこもられぬ、弟の二条の教通の大臣関白せられしが、ことのほかにその権もなくおはしき、ましてこの御代〈〇白河〉には、院にて政おきかせたまへば、執柄はたゞ職にそなはりたるばかりになりぬ、