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大鏡
一後一条
つぎのみかど当代、御いみなあつなり、〈〇中略〉おなじみかどゝ申せども、御うしろみおほくたのもしくおはしまし、御おほぢにて、たゞ今の入道殿下、〈〇藤原道長〉出家せさせ給へれど、よのおや、一切衆生、一子のごとくはぐゝみおはします、第一の御おぢにて、たゞ今の関白左大臣、〈〇頼通〉一天下おまつりごちておはすべき、つぎの御おぢ〈〇教通〉と申は内大臣にて左大将かけておはす、あるひは東宮大夫、〈〇頼宗〉中宮権大夫、〈〇能宣〉中納言〈〇長家〉など、さま〴〵にておはします、かたのごとくにおはしまさせば、御うしろみおほくおはします、むかしも今もみかどかしこしと申せど、臣あまたしてかたぶけたてまつるにはかたぶき給ふものなり、さればたゞ一天下は、わが御うしろみのかぎりにておはしませば、いとたのもしく、めでたき事なり、むかし一条の院の御なやみのおりおほせられけるは、すべからくは次第のまゝに(○○○○○○)、一のみこ(○○○○)〈〇敦康親王〉おなん春宮とすべけれど(○○○○○○○○○○○)、うしろみすべき人なきにより思ひかけず(○○○○○○○○○○○○○○○○○○)、さればこの二宮おばたて奉るなりとおほせられけるぞ此たうだいの御事よ、げにさる事ぞかし、