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今昔物語
二十二
閑院冬嗣右大臣并子息語第五
今昔、〈〇中略〉此の大臣〈〇藤原良房〉は、心の俸て広く、身の才賢くて、万の事人に勝れてぞ御ける、又和歌おぞ微妙く読給ける、御娘おば文徳天皇の御后〈〇明子〉にて、水尾の天皇〈〇清和〉の御母也、染殿の后と申す此也、其の后の御前に微妙き桜の花お瓶に指て被置たりけるお、父の太政大臣見給て読給ける也、
 年ふればよはひはおいぬしかはあれど花おしみればものおもひもなし、と后お花に譬へて読み給へる也けり、〈〇又見古今和歌集〉