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栄花物語
三様々の悦
このさきやうの大夫どの〈〇藤原道長〉の御うへ、〈〇道長妻倫子〉けしきだちてなやましうおぼしたれば、御読経御修法のそうどもおばさるものにて、しるしありとみえきこえたるそうたちめしあつめのゝしる、大との〈〇道長父兼家〉よりもみや〈〇兼家女円融后詮子〉よりも、いかに〳〵とある御せうそこひまなうつゞきたり、さていみじうのゝしりつれど、いとたひらかにことにいたうもなやませ給はで、めでたき女ぎみ〈〇彰子〉むまれ給お、かならずきさきがね(○○○○○)といみじきことにおぼしたれば、大とのよりも御よろこびたび〳〵きこえさせ給ふ、よろづいとかひあるおほんならひなり、