[p.1682]
大鏡
四右大臣師輔
元方民部卿のむまご、〈〇村上皇子広平親王〉まうけの君にておはするころ、みかどの御庚申せさせ給ふに、この民部卿まいり給へるさらなり、九条殿〈〇藤原師輔〉さぶらはせ給ひて人々あまたさぶらひて、ごうたせ給ふついでに、冷泉院のはらまれおはしましたるほどにて、さらぬだによひといかゞとおもひ申たるに、九条殿こよひのすぐろく、つかうまつらんとおほせらるゝままに、このはらまれ給へるみこ、おとこにおはすべくは、でう六いでことてうたせ給ひけるに、ただ一どにいでくるものか、ありとある人、めお見かはしてかんじもてはやし給ひ、わが御みづからもいみじとおぼしたりけるに、この民部卿のけしきいとあしうなりて、いろもあおうこそなりたりけれ、さてのちにれいにいでまして、その夜やがてむねにくぎはうちてきとこそのたまひけれ、