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続世継
五菊の露
よにもにさせ給はで、〈〇藤原忠通〉いづかたにも、うときやうにきこえさせ給ひて、きんだちなど心もとなくきこえさせ給ひしかども、世中みだれいできてのち、もとのやうに氏の長者にもかへりならせ給き、男君達もくらいたかくならせ給て、法師におはしますも僧正ともならせ給ふ、ところ〴〵の長吏もせさせ給へり、女御きさきかた〴〵おはして、〈〇崇徳后聖子、二条后育子、〉よろづあるべきことみなおはしましき、むかしときにあはせ給ひたる一の人におとらせ給事なかりき、馬おうしなひてなげかざりけんおきなゝどのやうにておはしましゝ、げにやくるしきよおすぐさせ給てのちは、かくさかえさせ給へり、つくらせ給ひたる御詩とて、人の申しは、
 官禄身にあまりてよおてらすといへども、素閑性にうけて権おあらそはず、とかやつくらせ給へるもその心なるべし、