[p.0002]
古事記伝

天(あめ)は虚空(そら)の上に在て、天神たちの坐ます御国なり、〈此外に理お以、こちたく説成し、或は其形などおも、さま〴〵おしはかりに雲などは、皆外国のさたにて、古伝にかなはざれば、凡て取にたらず、(中略)阿米てふ名は、葦萌(あしもえ)の切まりたるにて、斯(し)の省かりたるにやあらむ、葦はたヾ譬に雲る物なれども、成坐る神の御名にも負たまへればなり、又吾友横井千秋雲く、阿米とは青所見あおの袁お省き、美延お約めたるならむか、其は此国土よりは、たヾ蒼々と見ゆる、其随お以て名けたるなるべし、古より此間にも、他国にも、天おば蒼き物に雲ること多し、又阿袁(あお)と雲色の名も、本天(あめ)より出たるにやあらむと雲り、此考も然ることなり、〉