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東雅
一天文
天あめ 義不詳、我国太古の代に、あめといひし其語同じくして、其名義異なるあり、あめ又転じてあまといひしは、其斥いふ所ありと見えたり、漢字採用ひて、天読てあめとなし、あまとなすに至ては、古語の義隠れしもまたありと見えけり、〈天おあめといひ、あまといひし義、旧釈せし所も其説多かり、されど五方の言もとより同じからず、我国の語、我国のすがたあり、他方の言の如きも、また然ぞありける(中略)あめといひ、あまといふが如きも、其義并に詳ならねど、国史実録にしるされし所お併見るに、天おさしてあめといひしあり、人の至て高くして上なきおもて、天に配してあめといひしと見えしあり、至尊のある所なるおもて、あめともあまとも雲ひしと見えしあり、各其義当る所ありと見えけり、此等の事ども能く我国の書お読得たらん人の、自ら明かなるべき所なれば、此説お費すべき事にもあらず、◯下略〉