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倭訓栞
前編二十五比
ひさかた 天の枕辞にいへり、又空とも、日とも、月とも、星とも、雲とも、雨とも属けたり、或は都ともつヾけよめるは、天都の意なるべし、鏡ともつヾけり、天鏡の義なるべし、又たヾひさかたとのみいひて、空の事、月の事としたる歌も見えたり、久かたの光りのどけき春の日に、とも見えたり、万葉集に、久方又久堅に作れり、天先成とあれば、久方といふにや、漢書の注に、蕩々天体、堅清之状とも見えたり、続日本後紀の長歌に、瓢葛(ひさかた)と書るは、訓お仮たるもの也、されど礼記に、器用陶包、以象天地之性也ともいへば、包象(ひさかた)の義も拠ありともいへり、