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倭訓栞
前編十三曾
そら(○○) 神代紀に虚空の字およめり、万葉集に天もよめり、自然の辞なるべし、梵語雑名に、天お翻して素羅といふとも見えたり、神代紀に虚中といへるは未有方所也と釈せり、凡そ虚空といへる詞は、泛く天地の間お指といへり、後世唯天の事とのみ心得るは非じ、神代紀に坐於虚天而生児と見えたるは、天上と中国の道中お指ていへるにや、古事記に天津日高の御子虚空津日高とみえたるは、天子と太子との分ち成べし、