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筆のすさび

一月蝕〈◯中略〉 丙午〈◯天明六年〉元日の日蝕皆既は、日色茶色に見えて、薄暮のごとく、雀など棲宿せり、寛保二年壬戌五月日蝕は、白昼烏黒にして、星宿煉々たり、さながら夜のごとくなりしと雲ひ伝ふ、天学家も、日行至りて高く、月行至りて低き時は、暗きことは甚だしかるべし、されど星の見えしは、いかヾありしにかといひし、