[p.0059]
太閤記
十九
山中鹿助伝
十六歳の春、甲の立物に半月おしたりけるが、今日より三十日(みそか)の内に、武勇之誉お取候やうにと、三日月に立願せり、かヽる処に伯州小高之城主山名お攻討んと、義久発向しければ、山名も打向ひ及合戦、互に火出る計苦戦し、勝負まち〳〵なりしに、山中甚次郎と名乗出つヽ、菊池音八と渡し合せ、暫し相戦ひしが、終に菊池お討て首おさし上たり、此菊池は因伯二州において、隠れなき勇者なりき、是よりして三日月お、一世の間信仰せしとかや、