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平家物語

鵼の事
折ふしころは卯月十日あまりの事なれば、雲井に郭公二声三こえおとづれてとおりければ、左大臣殿、〈◯藤原基実〉ほとヽぎす名おもくもいにあぐるかな、とおほせられかけたりければ、よりまさ右のひざおつき、ひだりの袖おひろげて、月おすこしそばめにかけつヽ、ゆみはり月のいるにまかせて、とつかうまつり、御けんお給はりてまかりいづ、