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枕草子
十二
ある所に中の君とかやいひける人のもとに、君達にはあらねども、其心いたくすきたるものにいはれ、心ばせなどある人の、九月ばかりにいきて、有明の月のいみじうてりておもしろきに、名残おもひ出られんと、ことのはおつくしていへるに、今はいぬらんと遠く見おくるほどに、えもいはずえんなるほど也、出るやうに見せてたちかへり、たてじとみあいたる陰のかたにそひ立て、猶ゆきやらぬさまもいひしらせんと思ふに、有明の月のありつヽもと、うちいひてさしのぞきたるかみのかしらにもよりこず、五寸ばかりさがりて、火ともしたるやうなる月のひかり、もよほされて、おどろかさるヽ心ちしければ、やおらたちいでにけりとこそかたりしか、