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伊勢物語

昔これたかのみこと申みこおはしましけり、山崎のあなたに、水無瀬といふ所に宮有けり、〈◯中略〉夜更るまで酒のみ物語して、あるじのみこ、えひて入給ひなんとす、十一日の月もかくれなんとすれば、かのむまのかみの〈◯在原業平〉よめる、
あかなくにまだきも月のかくるヽか山のはにげて入ずもあらなん、
みこにかはり奉りて、   紀の有つね、
おしなべて嶺もたひらに成ななん山のはなくば月もいらじお