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花径樵話
二帙六
文昌星 坊間の売本の帙標題お題せし右肩などに、押印する文昌星と雲物あり、一鬼形の飛竜の如き物に駕し、隻手に升お挈げたる形なり、〈或は硯お挈げたるものありといへり〉或は頭上に三連星お画くあり、或は文昌星の三字のみ篆書刻せるあり、各朱お以て押印して文飾となす、或は雲、此星は書籍お守護する職たり、故に紙魚お避く、又此図は、鬼形の左手に、斗升お高く挈げたるは、魁の字にかたどれるなり、魁はさきがけと訓ずる字にて、此書の疾速に売れて利お得ん為の祝賀なりと、又勝田祐義〈正徳頃の人〉要字集節用大成、魁〈軍星〉字の標註に雲、魁星、斗魁とも、北斗柄とも雲ふ、北斗の七星の一つなり、さきがけお守るの星、又は文章お守るの星なり、右の手に筆お持、左の手に硯お持、鰲といふ魚に乗る、魁はさきがけとよむと見ゆ、