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四方の硯

星象お見ることは、農民よりくはしきはなし、大和の国は水のとぼしき処なれば、四月頃より夏中、農民夜もすがらいねずして、星象おはかり見て種おろし、あるひは夜陰の露おきたるに苗のしめりおしり、米穀の実のると、みのらざるとお、あらかじめはかりしる事なり、その星にからすきぼし、ひしぼし、すばるぼし、くどほしなどようの名おつけて、某(それ)の星は何時に何の位にあらはれ、何時に何の方にかくるなどいひて、その目つもりにてはかること露たがはず、