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万宝鄙事記
六占天気
雲ひがしへゆけば晴る、西へゆけば雨ふる、東南のかたへ行ばはるヽ、是西北風なる故也、京都にては雲清水のかたへ行ば必はるヽ、 乾の方雲あかくしてやうやくきゆるは晴、赤くして又色変ずるときは風雨なり、 魚の鱗のごとくなる雲あるは雨、又は風ふく、又ところどころに虎ふのごとく、こまかに横にすぢある雲たつは、是お水まさと雲、此雲見るヽかならず一両日に雨ふる、 又かた雲といふ有、塩のひかたのごとく、満天に大なる横すぢ有、これも又やがて雨ふる、 雲気みだれとぶは、大風ふかんとする也、雲の来る方より、烈風ふき来る、其方の防おすべし、 雲甚だあつくして湿ふは大雨 日の上下に雲気有て、竜のごとく見ゆるは、かならず風雨、 朔日、十五日、七八日、廿三四日、晦日、雲気四方にふさがるは雨、 久しく日てりて赤雲天お過て、山谷おかヾやかすは明る日雨、 秋の空に雲有て、縦くもりても風なければ雨なし、又東の方に雲お生ずるときは雨、 雨やみ雲晴るとも、山頭お雲おほひかくす時は又雨ふる、 朝日の上に黒雲有て、霧の如く日おおほひ、日の光かたはらに射て、うすく黄白色なるは、其日風雨有、暮つかた日いる時にかくのごとくなれば、其夜風雨あり、 朝東南に雲有ても、西北に雲なければ雨なし、暮にも又西北お見て雲なければ雨なし、 上風吹て雲ひらくとも、下風雲あらば又雨、 朝夕ともに雲ありても、段々(きれ〳〵)になりて分明なるは晴、 朝西にむらさきの雲たつは晴梅雨の後、白雲たかくして峯のごとく綿のごとくにわき出るは、雨止みたるしるしなり、 雲やぶれ、車のかたちしたるは、やがて大風ふく、西より東に高く行雲、白くして綿の如くなるお、すがいといふ、四時ともに晴天に有、此雲は天気のかんがへには加へざるがよし、秋西風にては雨ふるといへども、此雲にはかヽはらず、 日入て後赤雲四方にありて、天おてらすは大ひでり也、