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東雅
一天文
霧きり きりといふも亦暗の義なり、旧説にきりとは、くろの転語也と雲へり、〈きはくと同韻にして、りはらろ等の同韻なるおいふなり、〉 日向国風土記に、昔天孫の尊、此国高千穂二上之峯に天降給ひし時に、天暗冥にして昼夜お別たず、その土蜘蛛二人が教のまヽに、稲千穂おぬきて、籾となして投散し給ひしかば、天開晴お得たり、これに因りて高千穂二上の峯といふよしおしるせり、其峯は即今霧島が岳といふものにて、延喜式に見えし霧島神社、猶今も其峯の西にあるなり、さらば旧説の如き其義相合へりと見えたり、〈霞読てまぎるといふも、またこれ目昏(まぎる)の義なり、〉