[p.0171]
万葉集抄

露霜と雲事、先達の料簡まち〳〵也、或は露おつゆしもと雲、霜は露のなる物なれば、露おつゆしもといふといへり、これは因中説果の義にあたれり、或は霜おつゆしもと雲、露凝成霜故也、これは従本立名の心也、或は九月ばかりの寒露おいふ、露の霜に成ほどなれば、露霜と雲、霜にもなりはてず、なお露にて、又露にもあらぬほど也、是は中間の位にあたれり、三の義の中には、此義甚深也、又今の歌のごとくならば、隻露と霜とにかなへりといへる義也、