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源氏物語
七紅葉賀
ゆふだちしてなごり凉しき宵のまぎれに、うんめいでんのわたりおたヽずみありきたまへば、此内侍びはおいとおかしうひきいたり、〈◯中略〉ひきやみていといたくおもひみだれたるけはひなり、君あづまやお忍びやかにうたひて、より居給へるに、おしひらいてきませとうちそへたるも、例にたがひたるこヽちぞする、
 立ぬるヽ人しもあらじあづまやにうたてもかヽる雨そヽぎかな、とうちなげくお、我ひとりしもきヽおふまじけれど、うとましや何事おかくまではと覚ゆ、