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傭字例
附録
鐘礼
万葉集に鐘礼能雨しぐあめ雲々、また鐘礼とも書り、鐘は韻鏡第三転合音の字にて、漢音しよう、呉音しゆうにて、鐘も同音也、今しぐと転し用るは、黄鐘おわうしきと呼例なり、う韻おく韻に転じ用る例は、香山おかぐやま、勇礼おいくれといふ類あまたあり、悉曇に、かきくけこお喉音とするによれるなるべし、〈◯中略〉太田氏雲、鐘は漢転音ちよく、如今、小盃おちよくと喚作り、即鐘字也、この鐘の入声燭に竹の呉の原音ちよくあるの転なり、又呉転音しゆく、万葉集に鐘礼おしぐれとあり、又此転のう韻は唐音撥(は子)仮字の音にて、朝鮮などはくと呼やうに聞ゆといへり、章州おちやくちうといふ類なり雲々、かヽればこの鐘字は呉音の入声しゆくお、直音になほしてしぐと呼べるなり、竹の本音ちゆくお、ちくと呼がごとし、