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東雅
一天文
雪ゆき 義不詳、旧説に上古の語に、ゆきといひしは、潔斎の義なるなり、雪またゆきといふ事も、昊潔の義なりといふ、〈古語にいといひ、ゆといふことは、相転じていひけり、斎の字読て、いともゆともいひしが如き即是なり、古語にゆきといひしは、即今きよしといふ詞なり、ゆの音お開きて呼ぶ時は、きよといひ、きといふ音は転じてしとなるが故なり、凡物の色白きは、潔きものなれば、古語に其色の白きもの、多くはゆといひけり、雪、露、又木綿、繭などの如きこれなり、雪おゆきといふ、ゆとは白きなり、きとはけの転にして消なり、其色白くして消ゆるなりといふ説の如きは、いかがあるべき、〉