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古事記伝

沫雪はたヾ雪のことなり、万葉に数しらず多くよめる皆然り、其さまの沫に似たる故に雲なり、〈山川のたぎつせなどの沫は、まことに雪と似たるものにて、古歌にもさるよしよめり、後世に春の消易きお別て淡雪と雲ならへるは、淡しき雪と心得たるより起れるにや、沫は阿和、淡は阿波にて、音も異に、又万葉に沫雪とよめる、皆常の雪にて、冬お主とよめるおや、又霰と雲と雲説もあれど、さらに古の歌どもに協はず、甚誤なり、〉