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続近世奇人伝

僧恵南 恵南名忍鎧、号空華子、平安の人也、聞香に長じ一時に鳴、連理焼合五味七国おきヽしるのみならず、凡物の臭気おきくこと常ならず、或雪の朝、雪もてさま〴〵の物の象お作りて、童の持来りしお見て、此兎は某の家のあたりの雪かととふ、童どもしかりとこたふ、其作りたる人は某かととふ、又しかりといふ、傍の人おどろき、香のみならず、雪までも鑒定し給ふやととへば、微笑して、此雪魚臭にほひあれば、其家おさし、又其載たる板も臭気あれば其人おしりぬ、其人は魚賈なればといへり、