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古今著聞集
十一蹴鞠
後二条殿〈◯藤原師通〉三月の比、白河の斎院へ参給て、御鞠の会有けるに、しばし有て、かさみのきたる童、扇おかざして、片手に蒔絵の手箱の蓋に薄様敷て、雪おおほく盛て、日隠の間の御縁に置て帰入にけり、御あせなどたりげにて、日隠の間に沓はきながら御尻かけて、御手などにてはとらせ給はで、檜扇のさきにて、すこしすくひたまひけるが、しみたる雪にて、御直衣にかヽりたりけるがとけて、二重裏にうつりていでヽ、むら〳〵に見へける、