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東雅
一天文
風かぜ 義不詳、古語にさといひ、又かざといひし、皆是其語の転ぜしにて異なる義ありとも聞えず、旧事紀に、陽神朝霧お吹撥ふの気、化して風神となれりなどいふ事は、見えけれど、かぜといふ義の如きは聞えず、〈古語にかぜおさとのみ雲ひしによれば、かといひしは、上の詞助なりしに似たり、万葉集抄に、かは詞の上の助なり、弱きおかよわきといひ、細きおかぼそきといふが如しと見えたり、またせとは狭也とも見えたり、迫おせまるといふも、則迫狭の義なるなり、さらばかぜといふは、其気の物に迫りぬるおいふ事、たとへば雷風相薄るなど、いひし事の如くなりけんも知らず、さといひしはせの転語なり、〉