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倭訓栞
前編六加
かぜ 風およめり、かせ反け、気の義なるべし、又生すの義也、物風お得て生化す、よて風字虫に従へり、神代紀にも朝霧お吹撥(はらふ)の気風神となるといへり、風に陰陽あるは神代紀に見えて、春夏の風は物お吹あげ、秋冬の風は物お吹おとすも、理の自然なるべし、蠡海集には、春の風は下より升り、夏の風は空中に横行すともいへり、倭名抄に微風おこかぜとよめり、風はやみは疾風おいふ也、風の姿は物によせていふ也、風ひやかは冷なる也、字書に䫿お風凉と注せり、風ほめくは新撰字鏡に〈劉風〉およめり、風おいたみは、つよく吹おいふ、風のたよりは、そことなく伝へくるおいふ詞也、今も風便など音にいへり、河図帝通記に、風天地使也と見えたり、