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塵袋

一大風と雲ふは、家ふきやぶりなどする風歟、又別の心ある歟、毛詩に揃曰、西風謂之大風と雲々、にしかぜおも大風と雲べきにこそ、たに風と雲へども、必ず谷にふく風にもかぎらず、東風おば谷風と雲ふ、毛詩に習々谷風、注雲、習々和舒之貌、東風謂之谷風、陰陽和則谷風至、源順が鶯の詠に、こほりだにとまらぬ春の谷風にと雲へるこの心也、春は東より来れば、東風ははるかぜ也、秋は西より来る故に、西風は秋にかたどる、