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円珠庵雑記
こがらしは令木枯の意なり、からすとは葉お吹きしおりて、枯木のごとくなすなり、六帖に、木がらしの音にて秋は過ぎにしお今も梢にたえずふくかな、とよめる歌は、秋の風おこがらしといふよしによめり、〈◯中略〉野宮歌合に、〈◯中略〉正通は木がらしとは冬の風おこそいへ、此頃の風おいかヾ、冬のあらしお秋の初風といへるにやあらんと難じけれど、猶負にさだめらる、されど冬の風おこそいへといへるおば、然らずともいへる事はなければ、そのころも大かたは今のごとく冬の物としけるにこそ、