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竹取物語
大友の御ゆきの大納言は、〈◯中略〉遠くて筑紫のかたの海に漕出たまひぬ、いかヾしけむはやき風吹て、世界くらがりて、船お吹もてありく、いづれのかたともしらず、舟お海中にまかり入ぬべく吹まはして、波は船に打かけつヽまき入、神はおちかヽるやうにひらめきかヽるに、〈◯中略〉かぢ取答て申、神ならねば何わざおかつかふまつらむ、風吹波はげしけれども、神さへいたヾきにおちかヽるやうなるは、辰お殺さんと求め給ひ候へばかくある也、はやても竜のふかするなり、はや神にいのり給へといふ、