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閑田次筆

過し壬戌のとし〈◯享和二年〉七月晦日、上京今出川辺に一道の暴風、屋お壊り、天井床畳おさへ吹上、あるひは赤金もておほへる屋根などもまくり取離たり、才に幅一間ばかりが間にて、筋に当らざれば、隻尺の間にて障なし、末は田中村より叡山の西麓にいたりて止りしとぞ、蛇の登るならば雨あるべきに、一雫も降らず、これ羊角風といふものかといへり、北国にては折々あることにて、一目連と号くとぞ、