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万宝鄙事記
六占天気
風 七八月大風ふかんとては、必虹のごとくにしてきれたる雲たつ、これお颶母きらといふ、 冬日くれて風和かになる時は、明朝も又風はげし、 日の内に風おこるはよし、夜るおこるはあしヽ、日のうちに風やむはよし、夜半にやむはあしヽ、これは寒天のときの事なり、 東風急なるは蓑笠おそなふべし、東北風も雨、南風はその日たちまちにふらず、明る日か其暮にか必あめふる、西風北風はおほくは晴、北風は西風よりいよ〳〵よし、但し春北風ふけば時雨多し、秋は西風にて雨ふる、南風は四時ともに雨ふる、南に海ある所は、南風にも雨ふらずといふ所有、東に海おうけたる所も同じ、 乾風はかならずはるヽ故に、いぬい風お日吉と雲、 冬南風ふけば、二三日の間にかならず雪ふる、 風西南より転じて、西北風になれば弥大なり、 孫子曰、ひるの風はひさしく、よるのかぜはやむ、 大風ふかんとては、衆鳥空に鳴てひるがへり飛て、群魚水面におどり、星うごき、日月に暈有て、雲きれ〴〵にしてとぶ、其色白く黄にして、あつまり散る事さだまらず、雲日おめぐり、雲のあし黄にして行事はやし、 正二月に北風吹ば、必雨そふ物也、 西風久しければ火災有、物おかはかす故なり、西北風もつとも火災のうれへあり、〈◯中略〉 知風草といふ草有、和名おちから草共、風ぐさとも雲、かやに似たり、其ふしの有無お見て、そのとし大風の有無おしる、節一つあれば其年一度大かぜ吹、二つあれば二度ふく、三つあれば三度ふく、本にあれば春ふく、中にあれば夏秋ふく、末にあるときは冬大風有、