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槐記続篇
享保十六年三月八日、参候、〈◯山科道安〉仰に、〈◯近衛家熙〉三日の初雷は、さてしもつよかるべしと思ひしが、夫程にはなくておさまりたり、加茂の辺は近年になき大雷なりと、玄蕃が申したり、わづかのちがいにて、ひヾきの多少あるものなり、よく世間にてよく人々雲こと也、光ると其まヽ鳴雷はきびしきと雲、ひかると其まヽなる雷は近きゆへなり、遠きゆへに光るにあひだのあるなり、光るは鳴の勢なれば、別段にあるべきやうなし、自体鳴と電は同じことの筈なり、遠近の差別までなり、〈◯中略〉御亭にて前の搗衣お御覧あるに、杵の下たる時に音はせず、杵のあがる時に音のひヾきあるは、あれぼとの遠さゆへなりと仰せらる、