[p.0287][p.0288]
大海のはし
この内府〈◯中院通茂〉は、雷のなりはためくお、ことに好みきかせ給ひけり、常に喘おやませ給ひけるが、いみじうおこりなやませ給ふときも、雷なり出でぬれば、即おこたらせ給ひけり、有る時には、夕だちいみじうするに、寝殿のむねにのぼらせ給ひて、大笠などめしてぞ聞かせ給ひける、