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窓の須佐美

秋の頃雷の落たりし時、営中宿直の人の行厨おはこぶとて、さし荷ゆく下部にあたりて、其所へ倒れしが、半かヽりて死もやらず、身はうち砕ける如くにて、手足もなへて、あつかふべき様もなきお、板に乗せてよふ〳〵と持帰り、人の教たるに任せ、鮒おすりつぶして、総身にぬる事二夜三日に及べり、初一日より後いつとなく湿ひ出、三日後はやう〳〵しるしある様にて、五七日ぬりければ、常のごとくになりぬ、