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倭訓栞
前編二十爾
にげみづ 武蔵野の景色也、春より夏かけてうらヽかになぎたる空に、わかく生しげりたる草の原に、地気のたち升るが、こなたより見れば、草の葉末おしろ〳〵と、水の流るるが如く見ゆめり、まことの水には非ず、こと処にゆけば、又むかふに見ゆるおもて名けり、志怪録に、深州東鹿県中、有水影長七八尺、遥望見人馬往来如在水中、乃至前不見水と見えたり、